先月は、ブルゴーニュ、アルザス、シャンパーニュとボルドー以外のワイン産地に行く機会がありました。ブドウ品種はもちろん違いますが、ボルドーとシャンパーニュでは、ブドウの芽吹きの時期も全く違ってきます。今の時期の大敵は遅霜。最低気温が−2℃以下になるとこの新芽がやられて、成長の一部がストップしてしまいます。この時期に天気予報を見ると、まず最低気温予想を見てしまいます。
■2005年5月号
ボルドーワイン事情
シャトー・マルゴー、シャトー・ムートン、ペトリュス・・・ボルドーには世界中のワイン愛好家が熱望する偉大なワインが沢山あります。またその反面、日常消費用の手頃な価格のワインの生産地でもあり、ボルドー全体で果てしない数のワインが造られ、世界中に輸出されています。有名シャトーのおかげで、ボルドーワインのイメージはとても良く、ネゴシアンと呼ばれるワイン商が自分独自の商標を作り、大量消費用のワインが飛ぶように売れていました。
その状況が近年がらりと変わってきました。メルロ種、カベルネ種といったボルドー地区の主要なブドウ品種が世界中で造られ、また醸造技術の進歩により本家ボルドーよりも安価で質の高いワインが多数出てきたこと。
フランス国内の政策で、飲酒運転の取締りが厳格になり、レストラン、ホームパーティーでの消費量が激減。
若い世代がワインは難しいからとビールや甘いカクテル飲料を好んで飲む。ミネラルウォーターの台頭などなど、ワインの消費量は下がる一方です。
生産量は毎年ほぼ同じですので、国内消費が減り、輸出も頭打ちと言うことで、今ボルドーでは減反政策が行われるほど深刻な状況です。私の仕事は前回のコラムでお話した通り、まだあまり有名でない埋もれている造り手を探し出す。ことですが、生産者の所に行きいろいろ話をすると、ワインを買いに来たのに、シャトーの経営権を買ってくれないか。と言われることがあります。
そのような悲観的な話が多いのですが、弊社の扱うワイン生産者のほとんどは、このボルドーワイン不況に全く関係ないどころか、業績を伸ばしています。
それは、ワインが主張しているから。
主張していないワインは飲んでいても楽しくありません。それは価格が安いから主張していないと言うことではありません。例えば、3,000円のワインがあるとすると、この主張の仕方によって、ものすごい高いワインにもなり、逆にコスト・パフォーマンスの素晴らしいワインにもなります。500円のワインでも一緒です。
また、合わせる料理によってワインがとても美味しく感じられたり、その逆だったりします。その感覚が難しいと良く言われますが、日本人の皆様なら日頃から知らないうちにちゃんと経験を積んでいます。
夏の蒸し暑い日には、熱い煎茶ではなく、冷たい麦茶の方が嬉しいですし、ちょっと脂っこい料理の後には、温かいお茶の方を欲します。鮮度の高いお魚を見れば、すぐ判断できますし、白いご飯を食べれば、お米の質を一発で判断できるのは日本人だけです。
イメージしてください、塩辛に、ボルドーのタンニンが強いワインを合わせると生臭くて大変です。逆にマグロの刺身とブルゴーニュやボジョレの赤はびっくりするぐらい良い相乗効果を生み出します。揚げ物に添えるレモンの代わりに酸味のしっかりとしたワインをあわせてみて下さい。そしてその場に、居合わせた方々と意見の交換をしてみて下さい。ソムリエの話すような難しい詩的な表現は要りません。ご自分の感じたことをそのまま、伝えてみて下さい。この楽しみを知ってしまったら、今までただビンが並んでいるだけと思っていたワイン売り場が、果てしなく楽しいものに見えてくると断言します。
そして、その皆様の一言が知らない間に、販売店から輸入業者、私のような輸出業者、最後に生産者まで伝わり、ワインというものを通して、お互いの主張が重なり合ってきます。その流れがさらに良い物を生み出し、好循環をもたらすと考えています。
さあ今度は皆様がワインに対して主張をする番です。決して大げさではなく、皆様の何気ない一言が今のボルドーワインの状況を変えることができるかも知れません。
我々は、皆様の一言をお待ち致しております。
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